こんにちは!!
この記事では小児で発症する膝の痛みの一つであるSinding Larsen-Johansson病について知ることができます。
Sinding Larsen-Johansson病って??
1921年にChristian Magnus Flusen Sindeng LarsenとSvec Johanssonによって発表された病態です。彼らの名前から病態名が付き、Sinding Larsen-Johansson(シンディングラーセン ヨハンソン)病と呼ばれるようになりました。100年前に発表された病態なんですね!!
病態は【膝蓋腱の膝蓋骨起始部が慢性の機械刺激を受けて骨化異常をきたす】です!
んー、少し難しいですね、、、。
嚙み砕いて説明すると、膝蓋骨の下端部の膝蓋腱付着部に繰り返しの刺激が加わることで、膝蓋骨下端部にある骨端核に異常をきたす病態です。繰り返しの刺激にはジャンプ、ストップ、ダッシュなどの動作が関与し、いわゆるoveruse(使いすぎ)によって生じます。類似疾患に小児膝蓋骨下極の裂離骨折(sleeve fracture)があります。これは6~9歳前後の小児が転倒又はジャンプの着地時に発生することがあります。
下の図の赤丸で示した部位が障害部位です。

発症年齢・症状
Sinding Larsen-Johansson 病は骨端核に異常をきたす障害であるため、発症年齢は10~14歳の小児に好発します!膝蓋骨は4~5歳で骨端核が出現し、徐々に骨化していき、完全に骨化する前に過剰なストレスによって発症します。
発生にはジャンプ、ダッシュ、ストップ動作など膝関節屈伸運動における大腿四頭筋の伸張ストレスが原因として生じます。
症状には運動痛、圧痛、腫脹が確認されます。運動痛はジャンプ、ダッシュ、ストップ動作時、圧痛は膝蓋骨下端部です。下の図で圧痛ポイントを確認しましょう!!腫脹も膝蓋骨下端部に生じます。

鑑別疾患
Sinding Larsen-Johansson病 と鑑別しなければいけない疾患は様々あります。
- Osgood-schlatter(オスグッドシュラッター)病
- 膝蓋靭帯炎
- 分裂膝蓋骨
①Osgood-schlatter(オスグッドシュラッター)病
オスグッドシュラッダー病は成長期(10~15歳)の脛骨粗面部の骨端症です。発生頻度はSinding Larsen-Johansson病よりも多く、成長期の代表的な膝関節疾患です。発生にはoveruseが関与し、鑑別ポイントとしては圧痛点の違いとなります。
↓オスグッドシュラッダー病の圧痛ポイント

近年では圧痛点の違いだけでなく、超音波所見、MRI所見などを基に観察することが鑑別には重要である!
②膝蓋靭帯炎(Jumpers Knee)
膝蓋靭帯炎は膝蓋骨から脛骨粗面までの膝蓋靭帯部での炎症を言います。発生時期は成長期に多くみられ、膝関節を多く使うことによるoveruseで起こります。圧痛点は膝蓋骨下極から膝蓋靭帯中央部に多くみられるため、Sinding Larsen-Johansson病との鑑別が重要となります。
③分裂膝蓋骨
分裂膝蓋骨は先天的に膝蓋骨が2つ以上に分裂しているもの。多くは無症状に経過することが多いが、スポーツ活動や打撲などをきっかけに有痛性となることがある。分類(Saupe分類)によって3つに分けられる。Sinding Larsen-Johansson病とは特にⅠ型と鑑別する必要がある。

治療法
Sinding Larsen-Johansson病の治療の基本は保存療法です。主に疼痛の管理と下肢全体の運動機能評価を行います。
急性期は疼痛の管理がメインとなります。歩行、階段昇降などの日常生活動作にて、強い疼痛を訴える場合には局所の安静が重要となります。できるだけ疼痛誘発動作を避けるように指導します。
疼痛が軽減されたら、動作の評価を行います。Sinding Larsen-Johansson病・膝蓋腱炎・オスグッドシュラッダー病などを有する多くは膝関節への負荷の増大により発生します。大腿四頭筋のタイトネス、大腿四頭筋とハムストリングスの筋力比(H/Q比)、股関節・足関節の可動性低下などに対して評価しアプローチすることが重要となります。
参考文献
①標準整形外科学第11版
②今日の整形外科治療指針第6版
③Valentino M, Quiligotti C, Ruggirello M. Sinding-Larsen-Johansson syndrome: A case report. J Ultrasound. 2012;15(2):127-129. doi:10.1016/j.jus.2012.03.001
④S.López-AlamedaA.Alonso-BenaventeA.López-RuizdeSalazarP.Miragaya-LópezJ.A.Alonso-delOlmoP.González-Herranz Sinding-Larsen-Johansson disease: Analysis of the associated factorsEnfermedad de Sinding-Larsen-Johansson: análisis de factores asociados
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